ユニークな勉強会を開催し、「グリーフケア」を広めるコミュニティナース

さまざまな喪失へのケアを学び、伝えたい

安岡美緒さん(6期生)は、自身の母親を失った悲しみを経験し、感情にフタをして大人になりました。20歳のときに知ったのが「グリーフケア」。

「グリーフ」とは「悲嘆」という意味で、人や物など、さまざまな喪失体験による個々の感情のこと。個々の「グリーフ」に寄り添うことを「グリーフケア」と言います。

「グリーフ」は誰もが抱く、自然で正常な心の反応でもあります。

安岡さんは、勇気を出して遺族会に参加。10年ぶりに悲しみを表現し、涙を流す経験ができたことで、「グリーフケア」の必要性を強く感じました。

安岡さんは病院で看護師として働いていましたが、退職。
子どものグリーフケア」で知られるアメリカオレゴン州・ポートランドの『ダギーセンター』に足を運びました。
大学病院の小児科看護師をしていたベバリー・チャペルによって1983年に設立された「愛する人をなくした子どもや家族のためのセンター」です。

そこは、身近で大切な人を亡くした子どもたちが集い、遊びやおしゃべりを通じて自分の喪失体験に向き合うことのできる安心・安全な場所で、さまざまな工夫がされています。
音楽、アート、“火山の部屋”や“病院の部屋”などが用意され、環境面や建築面にも配慮が行き届いているのです。安岡さんは「日本でももっとこんな場が増えてほしい」と感じたそう。

安岡さんは現在、働く人とその家族のコミュニティに着目し、とある企業の保健室の立ち上げに関わりながら、「グリーフケア」を学ぶため大学にある研究所に通っています。身近に存在する「グリーフケア」は多くの場合、死別などの大きな悲しみを対象にしていますが、安岡さんは「もっと裾野を広げたい」と考えているそう。

彼女はその第一歩として、自分が学んだ内容を伝え、『ダギーセンター』を視察した報告も行う「グリーフを知ろうの会 〜グリーフケア勉強会〜」を企画しました。

ワークに取り組む様子

2018年12月に開催された勉強会は、実感をともなったおもしろいものでした。
「グリーフケア」とは何かを説明した後、参加者が「グリーフ」を体験するワークをも行ったのです。
どのようにしたのでしょうか?「折り紙でハートの形をつくった後、それを破ってもらい、修復する作業を通して喪失感を感じてもらったんです。破りながら感じた個々の感情とその揺れが『グリーフ』だと伝えました」と安岡さん。

参加者からは
「修復するのが大変で、元に戻せなかった」
「一度壊れたものは完全には元に戻らない」
「修復しても跡が残ると思った」
「ごめんね、と悲しい気持ちになった」
などの感想が寄せられました。

開催してみて、安岡さんは何を感じたのでしょうか。
「ワークでは、自分の意図したことが伝わったと感じられて良かったです。私が伝えたい『グリーフは死別で起こる気持ちだけではなく、誰もが日常で抱く身近な感情である』という点も伝わったと思います。私自身が、死別以外のケアの現状をもっと把握する必要があるとも感じましたね。グリーフケアの意味や価値を、どう言語化して伝えるのかが今後の大きな課題です。勉強会の内容を対象に合わせて変えていけたらとも思っています」。

「レベルアップさせて継続していきます」と語る安岡さん。彼女の学びやその共有がどう広がっていくか、期待が寄せられています。